【カイ(20代後半男性)の声】歩くような速さで(2023年4月) 

春、終わりと始まりの季節であり、忌々しい花粉症の季節でもある。前回から約11ヶ月、それほどの月日が経てば様々なことがあるものだ。
その中で最たるものといえば、やはり八おき塾に入ってからの目的であるアルバイトに受かったことだろう。

面接では大した手応えもなかったのだが、ヌルっと受かった。今までのことを思うと、なんとなく釈然としないものがあったが、今回は間が良かったのだろうと思いアルバイト初日を迎えたのだった。不安もあるが、考えてもしょうがないのでとりあえずやってみよう。
初日は覚えることも多く、四苦八苦しながらなんとかその日の仕事が終わったのだが、問題は次の日で、体がバキバキに痛いのである。そう筋肉痛だ。
慣れないこと、普段使わない筋肉を使う、思ったより力仕事だった、そもそも運動不足等々の理由により体中が筋肉痛になっていたのだった。痛いからと言って仕事を休めるわけもなく、自転車をパンパンになった脚で漕ぎ、仕事場に向かい、慣れない力仕事を行うのである。
ちょっとつらいとぼやきながら、日に日に治まっていく筋肉痛、それを少し嬉しく思っていたら次の問題が発生したのだ。父のコロナ発症だ。
ワクチン接種していたので大事には至らないだろうと思っていたので(実際大事なかった)、そう心配していなかったのだが、家族が発症したからには仕事場に連絡し、休まなければならないのだが、働き始めてまだ間もなく、家族がコロナにかかったので一週間休みますと言うのは、いささかいやらしいと言うか変に勘ぐられないかとか、妙な葛藤があった。
幸いにして自身はコロナにはかからず(喉に違和感があったが)予定通り一週間で仕事に復帰したのだった。

そうして日々少しずつ仕事に慣れて行き、ついに給料日だ。日々が忙しすぎて、そういえばそうだったという感覚だったが折角、給料が入ったのでなにか買おうと思い、そういえば姉が誕生日だったなと、自分の欲しいものと姉へのプレゼントを買うことで初給料を消費したのだった。  

12月といえばクリスマスに年末の行事と色々な事がある。そうしたイベントには様々な人や物が動く、そう繁忙期である。  
アルバイトを初めてすぐにこの繁忙期を経験することになったのだ。忙しさに揉まれ、ミスを犯したりしたが、繁忙期あるあるらしく、サラッと流してくれる職場の方に救われたり、そんなこんなで切り抜けられたのだった。

繁忙期を経験したおかげか日々の業務に余裕ができ、大したミスもなく淡々とこなすことが出来るようになった。
様々な事が起き、新しい仕事を任されたり、その忙しさに仕事をやめたくなったり、そうしてアルバイトを始めて約半年が立ったのだった。  

面倒くさがりの自分が現在まで無遅刻無欠席でアルバイトを続けられている。学校に行くことも出来なかったのに何故なのだろうかと、考えてみてもモヤモヤとしている。一応、責任感なのだろうか、ともかく良いことだ。

改めて考えてみると、何もかもが初めてなのにたった半年で慣れている自分がいて、人間って凄いなと思ってみたり、何年もかかると思っていたことが意外と早くできそうな気もしている。これが生来の楽観的な部分によるものなのか自信が付いたのか定かではないが、今までのじっとりと張り付くような焦燥感はなだらかになり、将来のことも前よりは考えるようになったのだ。考えると言っても、あれをやってみたいこれをやってみたい、それが続くのか? なんてことをウダウダと考えているだけであったが。
アルバイトを始める前に想像していたほどの見える道筋はない。それでも視界がひらき、新たな選択肢が見えるようになった。
現状は変われど、心持ちはあまり変わらずやる気が出るわけでもない、けれど今を踏みしめ歩くような速さで未来に進もうと思うのだ。

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