■ 【T.S(20代前半男性)の声】小さな第一歩(2019年9月)
大学の課題・公務員試験の勉強に手がつかなくなり、アパートに引きこもるようになったのが2年前の4月。大学を1年間休学してから復学しようとしたのですが、通えず実家に戻り、精神科に通いながら療養するようになりました。それから1年、特に変化もなく引きこもる生活が続いていました。そんなときに母に連れられ、福岡わかもの就労支援プロジェクトを紹介してもらいました。このまま何もしないままただ漫然と時が過ぎるのを待つのは良くないと思い、入塾することを決めました。
週に一回、新宮の近江コーチのもとでコーチングを受ける日々が始まりました。数回の面談を経て、はじめの一歩としてアルバイトに応募しようとするものの、勇気が出なくて電話をかけられず断念。イベント等を通して焦らずゆっくりじっくり歩んで行くことになりました。新宮ではもう一人の受講生さんと生春巻きを作って食べたり、カラオケをしたり、全体のイベントではボウリングに参加しました。新宮の方では少人数かつ見知った相手だったため楽しめたのですが、ボウリングでは初めての集団ということもあり、うまく馴染めず落ち込みました。なかなか思うようにいかない現状に焦りを感じていました。
そうやってくすぶってた中勧められたのが就労支援プロジェクト主導でのDVDの出荷作業でした。実際に働き始める前のワンクッションとして、コーチの方々に見守られながら働く訓練をするという趣旨のものです。作業自体比較的単純で時間も短めなこと、作業を通して普段接することのなかったコーチや受講生と親睦を深められること、この2点が自分の課題を乗り越えるうえでの中間目標になりえると思い、参加することに決めました。単純な作業とは書きましたが、実際に始めてみるとミスが乱発。自己嫌悪だったり羞恥心だったりネガティブな感情に苛まれそうになりましたが、コーチの方々が暖かく指導してくださったおかげで落ち着いた気持ちで作業に取り組むことができました。通い続けて回数をこなす毎に精度・速度共に良くなっていくのを感じ、ささやかながら充実感を感じております。今後料理をするための設備が整ったら、受講生で昼食づくりを担当するようになるとのことで、おいしい料理をふるまえたら更なる充実感を得られるのではないかと思い、胸を高鳴らせています。そうやって出荷作業を通して少しずつ自己肯定感を高めていきたいです。ひいてはこういったポジティブな感情を周りの人にもお裾分けできるといいなと思います。
出荷作業に通う傍ら、変わらず継続している新宮でのコーチングでは、自己分析を進めています。どうやら自分は生きていくうえで趣味やひとりの時間を重要視する傾向にあり、それらを充実させるための基盤として経済力・健康を位置づけているようです。とにかく今の自分には経済力が足りない、そのためまずは何らかの職に就かねばと考えています。とはいえ、働く具体的なイメージが浮かばず、どんな仕事をしたいのか見いだせていないのが現状です。一度は応募を挫折したアルバイトですが、今度こそ応募してみて経験を積んでいくつもりです。そうすれば今とはまた違ったものが見えてくるのではないかとそう思います。
どんなに些細なことでもいい、とりあえず動いてみなければ事態は変わらない。ゆっくりでも少しずつ歩んで行くしかないのでしょう。肝心なのは一歩目を見出すことだと思います。それが見えてこなければ進むことなどできないのですから。
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