【次郎の声】 福岡市南区民児協・自立支援部会(2018年7月)

何故、人はひきこもるのでしょうか。実際に経験した者として言いますと、これは一種の防衛本能が働いた結果だと思います。
最近、ニュースでは学生の登校拒否がよく取り上げられています。その理由はイジメ等様々ですが、それが共通して最もオーソドックスなひきこもりの最初の一歩だと言うことでしょう。
ですが、そうやってひきこもってしまう事は悪い事なのでしょうか。僕は一概にそうだとは思いません。それは、そういった悪い環境から一度身を引く事で冷静になって考える時間が出来るからです。そして、それは一時的な感情で最悪の選択をとらせない事にもつながります。ここでいう最悪の選択とは自殺や犯罪等の事です。最近でもありましたが、そういったニュースを聞くと自分の事のように悲しくなります。かと言って、その一時的な撤退も長期化すればひきこもりという新たな問題につながります。だからこそ早めの復帰が大切であり、そういった人達を支援する団体がある事を知っていただきたいと思います。

僕は数年前、自身のプライドを守る為にひきこもりました。高校生になるにつれ難しくなる勉強について行けず、お情けで合格した大学でもそれは変わらず結局、学業不振で単位を落とし自主退学しました。それでも、来年単位を取り直すなど方法はいくらでもあったのですが、その時は周りと1年遅れるという事実を受け入れられませんでした。というのも当時の僕は学歴コンプレックス(学歴至上主義)をこじらせており、レベルの高い大学に入り直すことでその事実を清算しようと考え、医学部再受験などの暴挙に走りました。もちろんそんな浅い考えの人間が合格するほど試験は易しくはなく、何の結果も出せぬまま数年をドブに捨てました。
その後もその事実に向き合わず、その時の参考書を使い、形だけの公務員試験の勉強をしていました。鳥巣さんのコーチングを受けたのはそんな時です。

皆さんは『coaching』という言葉をご存知でしょうか。スポーツなどの『coach(指導者)』と聞けばわかるかと思います。この『coach』の語源は『四輪馬車』が最初に作られた町に由来しており、ゆえに対象者が行きたい場所へ移動するサポートをすると言う意味になったそうです。だから、コーチングで目標を決めるのは受講生であり、その目標も様々です。私の場合は公務員試験合格ですが、他にも就職や、復学、はたまた動画配信者(youtuber)や映画監督を目指している方もいます。
彼らに対して鳥巣さん達コーチがその目標達成に向けて支援をするわけですね。かと言って、コーチの方々は就労経験はあっても公務員や学問、動画編集のプロではありません。彼らが行うのはあくまでサポートであり、主体的に動くのは受講生です。
僕のコーチングを例に挙げるなら、まず最初に試験科目や勉強方法、時期や会場、倍率などの情報を調べ鳥巣さんに報告する事から始まりました。それを繰り返し、自身の計画をコーチの方に説明して納得してもらいます。ある事実を人に説明する為には説明する本人がその事を十分に理解していないと相手を納得させる事は出来ません。僕自身、何度もやり直しを食らいましたが、そのおかげで今まで形だけだった公務員試験の勉強も明確な『目標』を持つ事ができ、腰を据えて取り組めています。
これは以前、人材育成に本気で取組んで、その若者と世界相手に戦ってきた鳥巣さんならではのコーチングなのだと思います。そういう型にはまらない方法をとってくれるからこそ、僕たちも自然にやる気が出てくるのです。

冒頭に述べましたが、別に支援の対象者はひきこもりだけではありません。それぞれの人がさまざまな理由で躓き、転んで下を向いてしまいます。中には一人ではどうしても立ち上がれない人だっています。僕自身も一人では立ち上がれず、また他人の手を借りることは恥だとすら考え、状況を悪化させてきました。それでも手を差し伸べてくれる人は必ずいます。僕の場合は母親でした。あの時、無理にでも鳥巣さんのところに連れて来てもらえなかったら僕は今でも転んだままだったでしょう。
最後に、そういった僕を支えてくれる人たちに感謝すると共に、終わりの言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
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