■ 東京都武蔵野市「仕事したい若者、集まれ!」(2017年9月)
私自身、こういう場でのスピーチは生まれてはじめてで、なかなかお聞き苦しい点もあるかと思いますが、最後まで聞いていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
ええと、まずは鳥巣さんと出会う前の私の事から始めます。
鳥巣さんと会うまでの私ですが、一言で言うなら、ひたすらふらふらと、足取りがおぼつかないまま生きてきたという感じです。
もともと学生の頃 イジメや仲間外れの常連だった私は自己評価というものが極端に低く、大学、社会に出ても、自分に自信が持てない状態がずっと続いていました。
そんな精神状態ですから、何の仕事をしてもいちいちテンパってしまってうまくいかず、それをずっと繰り返すうちに、生きることがだんだんイヤになっていきました。
ストレスで精神的に不安定になり、友人や相談できる相手も完全にいなくなった状態で
それでも生きていかねばいかず、当時は、通院していたメンタルクリニックで貰っていた薬の力だけが、自分にとってほぼ唯一の頼みの綱という状態でした。
引きこもり同然の無気力な日々を過ごし、たまに精神面で調子が上向いた時だけ、非正規の、短期間の仕事をしてわずかな小遣いを稼ぐ。そんな生活を十年ぐらい続けた訳です。
そういう日常を送っているものですから、まあ当然ながら、将来については不安ばかりで、30も半ばをすぎたころには不安の塊のようになっていました。なんとかしたいと思い、職業訓練だったりハローワークの就職相談だったり、いかにも、という事は一応やってはみましたが、何をしても今一つ手ごたえがない、手がかりがつかめない。社会や自身に対して、もやもやとした不安感、不信感が募るばかり。そんな泥沼のような状態がしばらく続いていました。
鳥巣さんとお会いしたのはそんな時でした。新聞のすみの方で相談会の広告を見つけて、なにかの糸口になれば、と思い、とりあえず一度会ってみる事にした訳です。
で、いざ実際話してみると、就職相談のはずがいつも間にか人生相談になっていて、普通は就職相談で話したりしないような深い部分の悩みも話していました。人によってはどん引きされてもおかしくない、自分の中の闇を吐き出すような内容です。それでも真剣に、じっくり話を聞いてくれて、なおかつアドバイスなんかも頂いたりして、ああ、この人だったら、もしかしたら自分の力になってくれるかもしれない。そう思った私は、意を決してコーチングを受けてみる事にしました。
そのコーチングで何をやったかですが、おおざっぱにいうと、鳥巣さんに手伝ってもらいながら、自分に対するマイナスのイメージ、もうぐちゃぐちゃに凝り固まったイメージを地道に解きほぐしていって、プラスのイメージで徐々に上書きしていく、そういう事の繰り返しです。そのための材料は、職歴とか学歴だけじゃなく、もうこれまで生きて来た中の、あらゆるエピソードから拾い集めていきました。
そうしていくと、いつしか内面に変化がありました。それまで自分では、自分の事を空っぽで何の役にも立たない人間だとずっと思って生きてきましたが、そういうイメージは、学校や会社といった、狭いコミュニティの、ほんのわずかな人間から植え付けられたもので、コーチングの中で改めて自分自身を見直していくと、うまくはいかなったけれども、自分なりに地道に必死に、これまでなんとか生き抜いてきた、そんなひたむきな自分の姿が見えてきたわけです。
それと同時に気付きもあって、誰かの人生の印象なんて見る人によって180度変わってしまうのだから、他人から見て自分の人生がどうだとか、気にし過ぎてもあまり意味がないと思うようになり、そうしてだんだん開きなおれたという面もありました。
そうこうして自分に対して前向きに考えられるようになってくると、次第に、面接などでも自分自身の事について、気負いなく、はっきりと受け答えができるようになっていきました。
その流れに乗るような形で、コーチングをはじめて半年、一つの成果がでました。人生初の正社員としての就職です。
当然、自分なりに準備して、万全の態勢で臨んだつもりでした。…けれども、やはりなかなかそう甘くはありませんでした。
ずっと非正規で仕事をやってきた私は、とにかく言われたことをひたすらやるという仕事のやり方に慣れすぎていて、自分で判断して、自分で仕事を組み立てていくという習慣がなかなか身に付きませんでした。
自分がどういう内容の仕事を、どういう意味を以てやっているのかを十分に理解しないまま、上っ面だけの子供の使いのような仕事を続けてしまいました。たとえば、取引先に商品を届けるように言われて、行ったはいいものの、本当にただ届けただけで、取引先の人とろくに話もせずに即帰ってしまったり。正直言って、仕事をこなしている、とは言いがたいような状況でした。
当然上司からは毎日のように叱られ、自分なりに修正しようと努力はしましたが、なかなか挽回できず、次第に会社に居づらくなり、だいたい3か月、ちょうど研修期間が終わる直前だったでしょうか。その会社を辞めてしまいました。
そこから再就職までは特に語る事はないです。正直そういう形で辞めたのはショックでしたが、しばらくぼんやりしているうちに、しょげていても仕方ないし、今の状況が面白くないという気持ちになってきたので、もう一度就職活動をやってみる事にしました。この辺、少しだけたくましくなっていたのかもしれません。
で、再就職活動をはじめて、幸いなことに比較的早い段階で次の仕事が見つかり、それで働き始めたのが、今の職場になります。
再就職から、先月でちょうど一年になります。どうして一年続けてこられたのかについてですが、皮肉な事に、最初の就職のときにとにかく失敗してやり直してを繰り返したおかげで、働き方の基本みたいなものが一応身についていたようで、それでなんとか
やってこれました。昔は電話の受け応えもうまくできませんでしたが、こうしてどうにかなっています。
ここまで私の現在に至るまでの話をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。正直私自身もまだ全く未熟で、人にアドバイスができるような立場だとも思っていません。でも一つだけ言える事があるとすれば、人間、きっかけなしではカンタンには変われない、という事でしょうか。
実際、自分一人の力だけで、自分の性格とか内面だったり、そういうものを変えるのはとても大変な事です。いくら「自分を変えるんだ!」と意気込んだところで、周囲の状況が変わらなければ、結局は、次第に流されるように、元に戻っていくのが自然だと思います。そうして、変われない自分に落ち込んで、余計にこもりがちになってしまいます。
でも何かのきっかけで、置かれている環境が変わったり、会って話す人間が増えたりして、状況が動きはじめると、それに引っ張られる形で、少しずつ自分も変わっていくのではないでしょうか。
そして、そういうきっかけは偶然訪れるものだけじゃなくて、自分で作り出す事もできます。私が鳥巣さんと思い切って会ってみたように。そして今日こうして東京に来たことも、もしかしたら、自分を知らないどこかに繋げてくれるのかもしれません。
今日ここに来られた事が、皆さんにとっても何か良いきっかけになればいいなと思いつつ、これでお話を終わらせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
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